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エッセイ 老い その2)

  1. 2012/02/12(日) 08:52:53|
  2. 小説|
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その2)
(人生の下り坂)
私たちは身体の機能が衰えるのを感じ始めると、人生の下り坂に差し掛かったことを知ります。肉体的機能が衰えていることに気付いた時、脳内機能も同時進行で衰えていると覚悟しておいた方が良いでしょう。身体にある細胞は分裂を繰り返し増殖していますが、無限に増殖を続けるわけではありません。いつかは増殖を止める時が来ます。
青年・壮年期には永遠に発展し続けると思い込んでいた体力・能力に限界が見え始めた時は、心の平静さを失って当然でしょう。ところが実は青年期を過ぎた後は体力・能力とも衰え始めているのです。私たちはそれに眼を向けません。
私たちが自分に衰えを感ずる時は、一つでもその機能に障害がもたらされた時です。でもその時に気づいても遅過ぎるのです。機能に障害が出始めたときに気づいても取り返しはつきません。
なぜ私たちは身体や脳の衰退に気づかないのでしょうか。あるいは気づかないふりをしているのでしょうか。
社会に出て仕事を始めたが最後、私たちは会社という組織の歯車に組み込まれてしまうのです。会社に入らなくとも、社会で仕事をしている以上、何らかの組織との関係はできます。そこで私たちは自分について考える時間を奪われます。自分のことを考えるより、会社や組織のことを考えることが優先されるからです。
昼間は仕事に埋没し、夜は昼間の仕事を忘れるために憂さを晴らします。自分の一日をゆっくり振り返ったり内省したりする暇は一切、持てないまま毎日が過ぎて行くのです。本当は自分が老いていることを直視するのが恐いのかも知れません。
体力は衰えつつあるのは認めるものの、脳力は青年期を過ぎても伸びているように錯覚します。脳細胞自体は急速に減少していますが、神経組織の連結はとどまることを知らないのである意味、脳力は伸展しているように思えます。暗記力は衰退するものの、思考力には磨きがかかります。脳力は知識ではなく知恵を蓄えるのに適する傾向が出て来るからです。
私たちが人生の下り坂を感じ始めるのは、早ければ50歳前後のことでありましょう。遅ければ定年退職し、身体や脳に不具合が生じ始めてからでしょう。身体が健康であり毎日、仕事に追いまくられている状態であれば、私たちは「老い」を意識することなどあり得ません。現代では退職後も趣味に打ち込んでさえいれば「老い」は考えなくて済むのです。
3へ続く

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